Claude無料版で試せる!特許明細書符号チェッカー

📝 前回の記事の続き

「外国特許技術者が作った日英翻訳チェックのプロンプトチェーン」への「無料版でも試したい」というご要望にお応えして作成しました。

今回はClaude無料版でも動作するプロンプトチェーンを実例でご紹介します。

前回の記事で日英翻訳チェックのプロンプトチェーンをご紹介しましたが、「有料版じゃないと試せない」というご意見をいただきました。

確かに、いきなり有料版は抵抗がありますよね。

そこで今回は、アプリのインストールは不要で、ブラウザだけで試せるClaude.aiの無料版でのプロンプトチェーンを作ってみました。題材は特許明細書の符号チェックです。

「プロンプトチェーンって何?」「段階的に進めるってどういうこと?」という疑問をお持ちの方に、実際の動きを体感していただければと思います。

🎯なぜ符号チェックを選んだか

特許明細書の符号チェックとは、図面に記載された符号(10、11、12など)と明細書の記載が一致しているかを確認する作業です。

  • 図面にある符号「25」が明細書で説明されていない
  • 明細書で「接続部材30」と書いているが、図面に「30」がない

こうした不整合は意外に見落としがちで、審査官の理解を妨げる原因になります。

AIが得意とする「抽出」「照合」「リスト化」の作業なので、無料版でも十分に動作することが期待できました。

⏱️開発過程:思いつきから実装まで

きっかけは昼休みの思いつき

「翻訳チェックは複雑すぎるけど、符号チェックなら無料版Claude.aiでも実現できるのでは?」

昼食を食べながらそう思い、午後の休憩時間にClaude.aiと対話を始めました。

作りながら考える開発スタイル

私:「特許明細書の符号チェックをプロンプトチェーンでやりたい」

Claude:「段階的に進める方法をご提案します...」

特別な知識は不要でした。普段の業務での困りごとを説明して、「段階的にやってみたい」と伝えただけです。

対話から実装、そして改良へ

  • 5段階の構成
  • 各段階での確認ポイント
  • 具体的なプロンプト文

AIとの対話で基本的なテンプレートは短時間で完成。その後、実際の検証を通じて段階3の2段階化や誤記検出機能を追加し、より実用的なツールに進化しました。

🔧無料版での動作確認:工夫すれば十分使える

検証に使った資料

ランダムに選択した国際公開 No. WO 2020/088409 A1(国際出願 No. PCT/CN2019/113704)及びその国内段階のデータを加工して用いています。

実際の動作

💡 アプリインストール不要!

Claude.aiの無料版は、ブラウザからclaude.aiにアクセスするだけで利用できます。アプリのインストールやダウンロードは一切不要です。

使い方はとてもシンプル:

  1. Claude.aiの新しいチャットを開く
  2. 最初のボックスに4つのファイルをドロップ:
    • プロンプトチェーンテンプレート(.md)
    • 符号チェック用明細書(.txt)
    • 符号チェック用図面 FIG.1(.png)
    • 符号チェック用図面 FIG.2(.png)
  3. 「プロンプトチェーンテンプレートを用いて明細書の符号チェックを行ってください」と指示

あとは、各段階の最後に:

  • 次の段階に進んで良ければ「はい
  • 問題があればその問題を記述

これだけで、5段階の符号チェックが順番に実行されます。

プロジェクトナレッジを使わなくても、テンプレートをコピー&ペーストするだけで動作しました。

💡プロンプトチェーンの「動き」を体感

5段階の構成

  1. 図面からの符号抽出:図面に記載されている全ての符号を読み取り
  2. 階層関係の分析:符号同士の親子関係を整理
  3. 明細書からの符号抽出:段落単位でのスキャンと出現回数カウント(2段階方式)
  4. 図面と明細書の照合:不整合や誤記の検出
  5. 総合レポート作成:問題点の整理と修正提案

段階的に進む安心感

一度に全てを処理するのではなく、各段階で確認できます:

  • 「符号の抽出は正しくできているか?」
  • 「階層関係の解釈は適切か?」
  • 「照合結果に見落としはないか?」

問題があれば途中で修正指示できるので、AIと協働しながら進める感覚が実感できます。

⚠️使用時の注意事項

機密情報の取扱い

  • 公開済み特許文書での検証を推奨
  • 未公開の発明内容については慎重な判断を
  • 各AIサービスの利用規約をご確認ください

組織での利用

  • 所属会社・事務所のIT利用ポリシーをご確認ください
  • AI利用ガイドラインがある場合はそれに従ってください

結果の解釈

  • AI分析結果は参考情報として活用
  • 最終的な技術判断は必ず人間が実施
  • 重要案件では専門家による検証を推奨

📝まとめ

特許明細書の符号チェッカーは、プロンプトチェーンの動きを体験するのに理想的な題材でした。

シンプル:符号の抽出と照合という基本的な作業
実用的:誤記検出も含む実務で使える機能
無料版対応:工夫次第で十分な性能を発揮
学べる:段階的協働の価値を実感

完璧なツールではありませんが、AIとの新しい協働方式を知る入口としては有効だと思います。

興味をお持ちの方は、公開済みの特許文書で試してみてください。きっと「こんなこともできるんだ」という発見があるはずです。

無料ダウンロード:符号チェッカー体験セット

すぐに試せるサンプルファイル付きのプロンプトチェーンテンプレートです。

📦 体験セットをダウンロード

ZIPファイルに含まれるもの:
・プロンプトチェーンテンプレート(iphub-ref-sign-ck-pc-ja-20250711-1.md)
・サンプル明細書(spec sample_ja.txt)
・サンプル図面 FIG.1(drawing sample_FIG1_ja.png)
・サンプル図面 FIG.2(drawing sample_FIG2_ja.png)
解凍後、Claude.aiに各ファイルを読み込ませてご使用ください

動作確認のヒント

明細書の符号をわざと書き換えて(例:「クランプリング122」を「クランプリング123」に変更)、AIが不整合を検出できるか試してみてください。プロンプトチェーンがどのように問題を発見するか、実際に体験できます。

この記事は2025年7月11日時点の情報に基づいています。
制作協力:このテンプレートは生成AI(Claude)との対話を通じて開発・改良されました。

【本記事に関するご質問やご意見はお問い合わせフォームで承ります。なお、営業・勧誘目的のご連絡はご遠慮ください。】

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