外国特許技術者が生成AIで特許ファミリー調査をやってみた

📝 前回の記事から続き

この記事は、「Claudeでまとめた!MCP サーバー設定ガイド」の実践編です。

前回は技術的な設定方法をご紹介しましたが、今回は実際の業務での活用方法を具体的にお見せします。

※ 本記事の手順は、実際にEP1000000を調査した結果を基に作成されています。

📝 2025年7月改訂版について

実際の検証により、Microsoft公式版(@playwright/mcp@latest)が最も安定して動作することが確認されたため、推奨設定を更新しました。以下はすべて検証済みの設定です。

特許ファミリー調査に、どれくらいの時間を費やしていますか?

外国特許技術者の日常業務で頻繁に行う作業の一つが、特許ファミリー調査です。ある特許の各国での権利化状況を把握することは、様々な場面で必要になります。

手動調査には一定の時間がかかりますが、Claude Desktop + Espacenetの組み合わせで、この作業を効率化できることが確認できました。

🌍Espacenet:包括的な特許ファミリー調査ツール

Espacenetは、世界中の特許庁データを統合したINPADOCファミリーデータベースです。外国特許技術者なら誰もが知っている、特許ファミリー調査の定番ツールですね。

なぜEspacenetが適しているか

  • データ統合力: 世界中の特許庁データを一元管理
  • ファミリー調査: INPADOCファミリーの包括的な表示
  • 無料でアクセス可能: 誰でも利用できる公開データベース
  • 多言語対応: 機械翻訳による多言語アクセス

📊実証済み活用例:EP1000000調査

実際にEP1000000の特許ファミリー調査を行った結果をご紹介します。

実際の指示

「EP1000000をEspacenetで検索して、特許ファミリーの情報を詳細に調査してください」

実行結果

  • 自動検索実行 – Espacenetで EP1000000A1 を発見
  • 特許ファミリー取得 – 5件のファミリーメンバーを特定
  • 詳細データ抽出 – Simple Family + INPADOC Family の両方
  • スクリーンショット保存 – 調査結果の証拠記録

調査時間: 約3分で完了(従来の手動調査と比較して大幅短縮)

取得された特許ファミリー情報

特許番号 国/地域 公開日 タイトル
ATE232441T1 オーストリア 2003-02-15 VORRICHTUNG ZUR HERSTELLUNG VON STEINFORMLINGEN FÜR DIE ZIEGELINDUSTRIE
EP1000000A1 欧州特許 2000-05-17 Apparatus for manufacturing green bricks for the brick manufacturing industry
EP1000000B1 欧州特許 2003-02-12 Apparatus for manufacturing green bricks for the brick manufacturing industry
NL1010536C2 オランダ 2000-05-15 Inrichting voor het vervaardigen van vormlingen voor de steenindustrie
US6093011A 米国 2000-07-25 Apparatus for manufacturing green bricks for the brick manufacturing industry

🚀Espacenet調査の実際の使用方法

Step 1: Claude Desktopを起動

前回の記事で設定したClaude Desktopを起動します。

Step 2: 自然言語で指示

基本的な特許ファミリー調査:

「EP1234567の特許ファミリー情報をEspacenetで調査してください。
権利化状況と技術分野を含めて、表にまとめてください。」

複数特許の一括調査:

「以下の特許について、Espacenetで特許ファミリーを調査してください:
US8123456, EP2345678, CN101234567
各特許の主要国での権利化状況を表形式でまとめてください。」

Step 3: Claudeが自動実行

  1. Espacenetで検索実行
  2. 📊 特許ファミリー情報取得
  3. 🔍 権利化状況確認
  4. 📄 結果を表形式で整理
  5. 📸 スクリーンショット保存(調査証跡)

🛠️推奨設定:Microsoft公式版

検証の結果、Microsoft公式版が最も安定して動作することが確認されました:

前提条件: Google Chromeのインストール

Microsoft版のPlaywright MCPは、システムにインストールされているGoogle Chromeを使用します。Google Chromeがインストールされていない場合は、事前にインストールしてください。

Microsoft版の特徴

  • 設定: @playwright/mcp@latest
  • 必要なもの: Google Chromeのインストール
  • メリット:
    • 追加インストール不要
    • 公式サポート
    • 安定動作を確認済み
  • 動作確認済み: 実際にEspacenet調査で検証完了

Claude Desktop設定

基本設定(Espacenet調査のみ):

{
  "mcpServers": {
    "playwright": {
      "command": "npx",
      "args": ["-y", "@playwright/mcp@latest"]
    }
  }
}

USPTO等からファイルダウンロードを含む場合:

{
  "mcpServers": {
    "filesystem": {
      "command": "npx",
      "args": [
        "-y",
        "@modelcontextprotocol/server-filesystem",
        "C:\\Users\\YourName\\Desktop",
        "C:\\Users\\YourName\\Downloads"
      ]
    },
    "playwright": {
      "command": "npx",
      "args": ["-y", "@playwright/mcp@latest"]
    }
  }
}

⚠️ ファイルダウンロードに関する重要な注意

Playwright MCPでダウンロードしたファイルは一時フォルダに保存されます。

  • PDFダウンロードは手動で行うことを推奨
  • 情報収集・データ取得には最適
  • ファイル保存が必要な場合は、URLを取得して手動ダウンロード

🌍その他の特許庁データベース(補完的活用)

Espacenetでの基本調査の後、必要に応じて各国データベースで詳細確認を行います。

J-PlatPat(日本)

使用場面: 日本案件の詳細分析

「JP2023-123456をJ-PlatPatで検索して、
審査経過情報と引用文献を詳細に調査してください。」

USPTO Patent Center(米国)

使用場面: 米国案件の審査経過詳細

注意: PDFダウンロードは手動推奨

🔧トラブルシューティング

問題1: “Playwright MCP server not found”

解決方法:

  1. 設定ファイルの記述を確認(特にスペルミス)
  2. Node.jsが正しくインストールされているか確認:node --version
  3. Claude Desktopを完全に再起動

問題2: Google Chrome使用時のエラー

症状: @playwright/mcp@latest 使用時にエラー

解決方法:

  1. Google Chromeが最新版か確認
  2. Google Chromeを一度完全に終了してから再試行

問題3: 特定のデータベースでエラー

解決方法:

  1. 「〇〇データベースでエラーが出ました」とClaudeに報告
  2. 代替データベースでの調査を指示
  3. 時間をおいて再試行

📚 次の記事:文書作成業務での活用

特許ファミリー調査の次は、日英翻訳チェックでの活用です。実務経験を基に作成したプロンプトチェーンのテンプレートをご紹介します。

▶️ 「外国特許技術者が作った日英翻訳チェックのプロンプトチェーン」へ続く

免責事項

  • 各種設定は企業ポリシーにより動作が異なる場合があります
  • 実際の業務に導入される前に、必ずテスト環境での動作確認を行ってください

【本記事に関するご質問やご意見はお問い合わせフォームで承ります。なお、営業・勧誘目的のご連絡はご遠慮ください。】

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