フリーランスの外国特許技術者になろうと考えていた頃、そしてフリーランスになってからも、元同僚や先輩方から「大丈夫なの」と心配してもらいました。ありがたいことですが、至極当然のことだと思います。前回(英語の投稿も含めると前々回)の投稿で書いたように、外国特許技術者は様々なつながりの中で組織的に仕事をしていくものだと思っています。ですので、本質的にフリーランスとしてやるのに向かない仕事だと、私も理解しています。在宅勤務で特定の特許事務所の仕事のみを行う外国特許技術者はいると思いますが、不特定多数の特許事務所から仕事を受けるフリーランスの外国特許技術者というのは他に聞いたことがありません。(偶然にもこの記事を見つけたフリーランスの外国特許技術者の方、もし興味がありましたら是非ホームページにある連絡先までご連絡下さい。)

ではなぜフリーランスの特許技術者になったのか。特許事務所勤めを辞める段階とフリーランスになる段階とがあるわけですが、後者の段階に至った理由に絞ります。とはいっても、はっきり理由があった訳ではないのですが、今思えば、(1) やってみたかったから、(2) 需要があると思われたから、あたりかと思います。

(1) の「やってみたかったから」というのは、両親が田舎で自営業をやっていたというのが大きいと思います。しかも小学生の時の同級生の親の職業は、兼業農家、公務員、農協職員などはありましたが、純粋なサラリーマンは皆無で、私の親戚もほとんどが農家でした。なので、サラリーマンが馴染めないという程ではないのですが、一度は自営業をやってみたいと思っていました。いつかは自営業をやることになるのではないかと思っていた、というのがより正確かもしれません。

(2) の「需要があると思われたから」といっても、恥ずかしながらマーケットリサーチとかをしている訳ではありません。しかし、特許事務所の人員構成を考えると、外部のフリーランスの外国特許技術者が必要なケースが少なからずあると考えました。日本弁理士会のインターネットサイトで公開されている2016年7月31日現在のデータによると、弁理士の数は11,101名、うち特許事務所(特許業務法人を含む(以下同じ))で勤務しているかまたはこれらを経営している弁理士の数は8,301名になります。特許事務所の総数は4,663ですが、うち3,164(約68%)は、弁理士が1名の特許事務所(いわゆる「一人事務所」)です。このような一人事務所のように弁理士が少ない事務所では、急な外国特許出願の依頼に弁理士が対応するのが大変だったり、外国特許出願専門の所員を雇うほど外国特許出願の数が多くなかったりといった課題があり、フリーランスの外国特許技術者を単発で使うことができれば、そういった課題を解決できるのではないかと考えました。

さて、来月でフリーランスになって1年になります。(2)の目論見については、まだ正しかったのかどうか分かりません。というのも、未だに一人事務所などの小規模特許事務所からの依頼を頂いていないからです。フリーランスは、認知してもらうまでに時間がかかるものだなぁ、とあらためて感じました。このブログなどを通して、徐々に知られていくと嬉しいと思っています。